股上は深く、程よくテーパードを効かせたルーズなシルエット。
ダメージは複数箇所に大胆に施し、あえて履き潰した印象に仕上げています。
構築的なトップスやシャツと対を成すように、“崩し”のバランスとしてこのデニムは機能しました。
このデニムパンツは、構築的なアイテムに対する“抜け”としてスタートしましたが、予想以上に反響が大きく、翌2016年春夏シーズンには、デニムだけで構成したミニコレクションを発表するに至ります。
人気の高かった、股上の深いルーズシルエットをはじめ、ベルボトム、スキニー、ストレート、スリムストレートまで、
CINOHらしい視点で再構築した5型を展開。
デニムは単なる“外し”の存在から、CINOHにおける一つの表現軸へと変化していきました。
ブランドらしいドレス要素を重ねながらも、ベースはあくまで5ポケットのカジュアルな構造を踏襲。
側章を思わせる加工を施すなど、定番的なデニムパンツの枠組みの中で、“エレガンスの余白”を加える試みも行っていました。
その後カジュアルなアイテムとして受け入れられていましたが、自身の気分として“今あえてCINOHで作りたいデニム”が見えづらくなってきたことがあり、徐々にコレクションとしてのスケールを抑えたものへと変化していきました。
CINOHにとってデニムは、ただの定番ではなく、“構築性の中にある抜け感”を体現するための重要なピース。
その思いは変わらず静かに継続しており、断続的ではありながらも、小さな規模での発表は続けていました。
そして22年。デニムコレクションはこの年からスタートしたブラックフォーマルコレクションで象徴的だったフロントスリットパンツのディテールがCINOHのデニムに新たな視点を加えるきっかけとなりました。
スラックスの構造やラインを想起させるデニムはCINOHの気分を宿した新しい提案となっていきます。
その流れを受けて、現在のCINOHのデニムは、さらに“ブランドらしさ”を深めたアプローチへと進化しています。
センタークリースや2タック、側章を想起させるサイドライン——。
スラックスの構造やディテールをデニムに落とし込み、カジュアルでありながら、どこかエレガントな佇まいを実現しています。
それは、ただの“きちんと感”ではなく、CINOHが追い求める“静かな緊張感”と“抜け”のバランスを宿したスタイル。
デニムという素材に、端正なライン感を重ねた、CINOHらしい提案をしています。