SS2026 SEASON THEME
今シーズン、CINOHは「円相」という言葉をウィメンズコレクションの
中心に据えました。
禅における円相は、円そのものというより、円を描くという行為そのもの、あるいは描かれた円が持つ“未完”の美に価値があるとされます。
正確さではなく、呼吸のリズムや腕の動きに宿るゆらぎや歪みにこそ、人の存在や感覚が現れる――その思想に着目し、コレクションに取り入れようと試みました。
ウィメンズでは、円を模したパターンを起点としながらも、その円が“崩れる”瞬間に現れるラインや、運動の中で生まれる綻び、ゆらぎをディテールへと落とし込んでいます。
完璧な円ではなく、かたちの綻びそのものが意図となる。
それは、解釈の余白を残す構成であり、受け手によって異なる捉え方が生まれる、開かれたデザインです。
柔らかく描かれたカーブ、構築の中ににじむわずかなゆらぎ。
そのどれもが、存在感へとつながっていきます。
一方のメンズでは、構築からほんの少し距離をとりながら、「適当すぎない適当さ」を基調としています。
きっちりと作り込まない、しかし崩しすぎない。その中間にある自然体のバランス。
あえてかたちを“ずらす”という試みは、メンズの随所に取り入れられています。
例えばアームホールにポケットの構造をとりいれたり、同素材の重ね方でレイヤードの奥行きを生んだり。
あるいは、付属位置をわずかに ずらすだけで、無意識の感覚を揺さぶる。
さらに、「円相」がもつ“解釈の余白”は、素材選びの中にも現れています。
たとえば、ミリタリーという機能的な文脈を持つかたちに、シルクやスーパー原料のウールツイルといった上質な素材をあてがうことで、アイテムのあり方そのものに多義的な余白を残すことを意図しています。
それは、着る人のスタイルによって、カジュアルにもドレスにも解釈できる、枠にとらわれないアイテムです。
CINOHが意図的に提示した“未完”のかたちに、着る人自身の感覚が余白を埋めていくような構成です。
今季のコレクションは、構築の精度とあえての曖昧さ、その両方を併せ持つことで、
完成を急がない“プロセスの美”や、“決めすぎない強さ”をかたちにしています。
程よい緊張をまといながら、着る人の意思をやわらかく受け止める。
型にはまらない、自由な服
未完であることにこそ、自由が宿る――そのような意図を込めたシーズンです。
Photography by Bungo Tsuchiya
Hair by Hirokazu Endo
Make Up by Yuka Washizu
Model Kristin Drab
Model Hannah Claverie
Model Konstantin

